Retrovirus
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親友(EVE ZERO)

 むしゃくしゃ気分を誤魔化す為に、勢いで一気に缶ビールを煽る。
「無駄に飲むなよ、おい」
 それを見兼ねてか釘をさす弥生。
 あえてそれを無視して、煽ったビール缶半分を一気に飲み干した。
「わーってるわよ、ちょっとだけ、ちょっとだけ」
 無理に作った笑顔で弥生にそう言うと、私は残り半分のビールも一気に飲み干した。

 今日、全てが終わった。
 多分私の中では、一番来て欲しくなかった日であり、結果だった。
 最悪な7日間。
 ……もう、同じ悲劇は繰り返したくない……。

「どうかしたのか?」
 ボーッと物思いに耽っている私を見て、弥生が心配そうに声を掛けてきた。
 うん……、と曖昧に返事を返す。
 どう切り出していいかわかんない。
 口に出せば、全部言っちゃいそうで……恐い。
 横目で弥生を見ると、4本目の煙草に火を付けながら私を見ていた。
 ふと、目が合う。
 ちょっとだけ真剣な表情。
 私が何か言い出すのを待っていてくれてる。
 いつもこう。
 いつも、必要な時に近くにいてくれる、無二な親友。
 その強さと優しさに、私はいつも励まされっぱなし。
 ここまで仕事を続けてこれたのも、弥生のおかげってのもあるかもね。
「あーあ、もう、最悪よぉ」
 わざと明るい声で切り出す。
「あんまし詳しくは話せないんだけどね。護衛してた奴、やっぱ悪者だったし。殺され……そうになったし……それに…………」
 最後までトアを守れなかったし……。
 急に押し黙った私を見て、弥生が大きく息を吐く。
「……自分で決めた事が結果的に悪くても、誰かの所為には出来ない。よかれと思ってやった事なら、後悔しちゃダメだ」
 ぽつりと静かな空間に弥生の声が響いた。
「後悔はいつでも出来る。諦めたら終わりだぞ、まりな」
 静かに呟かれた言葉が重かった。
 それは何だか、言った弥生本人も自分に言い聞かせているみたいで。
 しばらくの沈黙の後、思い立ったように短くなった煙草を灰皿に押し付けて火を消すと、私に向き直る弥生。
 それまで厳しい光を宿していた目が、すっと優しい光を灯した。
「でも、大丈夫だな、まりななら。なんてったって、私の親友だしな」
 そう言って私の前髪をくしゃくしゃっと掻きあげた。
 突然の事にぽかんと呆けてしまう私。
 そして。
「…………ありがと」
 そう、声に出すのが精一杯だった。
 余りの弥生の優しさに目頭が熱くなる。
「おっと、泣くなよ? 泣いたら親友失格」
 ずいっと私の目前に人差し指を突き出して悪戯な笑みを浮かべる弥生。
 私もそれにつられる様に笑みが零れる。
「それ、セコイ」
「セコくない。強がりはまりなの専売特許だろう?」
 そう言って大笑いする弥生。
「むぅ……それ、慰めなの~?」
「あぁ。私なりの精一杯だ」
「ウソっぽいなぁ、それ」
「何? 信じてないのか? ったく、人が真剣にまりなを慰めてやってるのに」
 と、弥生がわざとらしくはぶて顔を見せる。
 そんな弥生を私は笑い飛ばした。

 いつの間にか、もやもやとしていた気分が楽になっている。
 ただちょっとの笑顔で、こんなに癒される。
 とても大切な私の親友。

「弥生、ちょっとちょっと」
「ん? 何だ?」
「いーから、もちっとこっち来て」
「なんだか悪い予感がするぞ、まりな」
 だから、ほんのばかしのお礼、しなくちゃね。
「へへーっ、大当たり~☆」
 近寄ってきた弥生の頬に私は軽く口唇を押し当てた。

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